写真,思い出

写真の中の桜と姉

私は小さなころから、姉のまねばかりする子でした。私から見た姉は、物知りで頼りがいがあり、いつも色んなことを私に教えてくれる、身近な先生でした。姉は読書が大好きで、触発された私も姉の勧める本を次々読み、姉と同じ世界に浸ることが喜びでした。そんな中、姉がはまったのが「司馬遼太郎」です。当然私にも勧めてくれたので、私もすぐに好きになりました。司馬遼太郎ブームは長いこと続き、社会人になったころの一番盛り上がっていた本は「坂の上の雲」でした。

 

司馬遼太郎ブーム

その頃私たちは実家を出て二人で暮らしており、かつ、その家のすぐ近くに、「坂の上の雲」の主人公の一人、秋山好古が勤務していた「騎兵隊」の現在の部署があったのです。自衛隊ですから、基本的には中には入れません。ただ、地域との交流の為か、春の桜の季節に施設を開放することがわかりました

 

姉と二人でわくわくしながらその日を待ち、そして当日。綺麗に咲いた桜の中、私たちは自衛隊に向かい、そしてその展示室で、秋山好古の写真を見ることが出来ました。姉も私も感慨深く、本当にこの土地にいたんだねえ、と暫くその写真を眺めていました。

 

一面の桜

感動に浸りながら建物を出ると、そこも一面桜が咲いています。その下で思い思いに寛ぐ人たちに混ざり、私たちも腰を下ろしました。その時、写真を見ることができて感動のあまり放心している姉を、私は写真に撮りました。

 

私が好きだったのは、姉の知的なところだけではありません。姉妹でありながらあまり似ていない私たち。私は、姉のような品のある顔になりたかった。姉のような柔らかい髪の毛と、姉のような白い肌になりたかった。姉はそういう意味でも、私の憧れでした。

 

桜の下で寛ぐ姉は、まだ寒い季節だったので、ミルクティー色のロングコートを着ていました。その柔らかい色と、桜の、同じく柔らかい色の中で、色白の姉の顔はさらに白く、美しく見えました。

 

大好きな姉

姉は今、父の介護をしています。結婚して家を出てしまった私は、姉に任せるしかありません。時々実家に帰ると、疲れのせいで冴えない顔色の姉が、やはり疲れた口調で近況を話してくれます。仕事先で頑張りすぎて体を壊し、実家で静養しているうちに父も母も具合が悪くなり、そのまま二人の介護をすることになってしまった姉。美しかった髪の毛は短く切り、肌はくすんでいます。それでも姉は、凛としています。やはり、綺麗なのです。私に何か手伝えることはないか、と聞いても、あなたはお腹の子供のことだけ考えなさい、と、姉は姉らしく言います。私は、そんな風に頑張り屋さんな姉が大好きです。

 

桜の下の姉とはずいぶん変わってしまったけれど、今の姉も大好きです。次の春にはみんなで桜を見に行こう、と誘ってみるつもりです。"